カレーソーセージをめぐるレーナの物語 |ウーヴェ・ティム
カレーソーセージをめぐるレーナの物語
ウーヴェ・ティム
河出書房新社 刊
発売日 2005-06-10
オススメの1冊です。 2005-09-26
本書を読んで、いったいカレーソーセージなる食べ物がどんな味なのか作って試さない人がいるでしょうか。それほど本書で描かれるこの魅惑的な食べ物は、あこがれと賞賛に満ちていますね。しかし出発点はカレーソーセージなんですが、そこからひろがる物語は終戦まぢかの二度目の大戦を舞台に、当時のドイツの一般市民の日常と戦争に囚われた人たちを描いて間然するところがありません。ミニマムな状況を描きながら、それをとりまく世界が自然と浮き上がって見えてくるところなどたいしたものだと思いました。
語り手が自由自在に入れかわる手法も、とても新鮮でした。映画ではとても効果的に使われているこの手法を、これだけ大胆に小説にとりいれて成功している例をぼくは知りません。普通なら混乱しそうなものですが、本書ではとても自然に馴染めてしまう。ウマイですね。
しかしこのレーナという女性、ヒロインとしてはいささか年くってるわけですが、とても魅力的だ。気風がいいというか、大胆というか、いいかえれば大雑把な性格ってことになるのかもしれませんが、戦争という混乱した時代で生き残っていこうと思えば、こういう性格でないとダメなのかもしれませんね。ひとつ本書を読んで驚いたのが、ドイツ市民の中にはナチス党員じゃない人もいたっていう事実です。主人公のレーナは、敗戦が決まってから新聞で報道されたアウシュビッツの惨状をみて、ショックを受けるんです。これがとても意外でした。そうなのか、そうだったのかと目からウロコの落ちる思いでした。
とにかく、本書は良かった。ささやかながらとてもいい映画を観たような幸せな気持ちになれました。
それは巷でさんざん語られている戦争物語とはまったくちがっている 2005-09-22
魅力的なレシピが登場する小説というのがある。藤原伊織の「テロリストのパラソル」に出てくるホットドッグ、ありゃ旨そうだった。小説の筋よりも、あのレシピに痺れた。そういえば、あのホットドッグの隠し味もカレー粉だったな。
この小説は、カレーソーセージ発明の由来を、孫ほどの語り手が、86歳の婆さんにヒアリングするという構成である。カレーソーセージの由来はほんの最後にしか出てこなくって、そこに至るまでの婆さんの“戦時下の恋ばな”が小説の要だ。そして、婆さんの恋、というか、若い愛人との出会い、ひと時の二人の暮らし、別れ、再会が、なんとも素敵なのである。文中の言葉を借りれば、“それは巷でさんざん語られている戦争物語とはまったくちがっている”。つまり、それは大時代的に語られる物語とは違っていて、ものすごく身近で切実でリアルで抱きしめたくなるような物語なのだ。
この素敵な昔話は、本文をじっくり味わってもらうしかないのだけど、カレーソーセージが小説の添え物かと言うと、それも違っている。婆さんの恋とカレーソーセージの由来は、やはり切っても切れない関係なのである。なぜ婆さんが馴染みのないカレーを材料に選んだかっていうと、それが大切な人の大事な想い出と結びついていたからだ。“味の記憶”“記憶の味”っていうのがこの小説の主題のひとつになっている。
まあ、ドイツに行ったら絶対、屋台でカレーソーセージを食べたくなることは請け合いである。こんな素敵な思い出と結びついた料理をひとつでも持っていたら、その人の人生は、もうそれだけでOK!だろうな。
独特の素材 2005-09-06
ドイツの小説です。
カレーソーセージとは日本でいうたこ焼き。
アメリカでいうホットドック。
それぐらいドイツではメジャーな食べ物だそうで
基本は細かく切ったソーセージにケチャップとカレー粉のソースをかけるものだけど屋台によってレシピが違うとか。 これはそのカレーソーセージがいかにしてうまれたかを語るフィクション。 カレーソーセージ誕生の裏には、第二次世界大戦とひとつの恋愛があった・・・。というタイトルからはおよそ想像もつかない重厚な物語が展開していきます。 カレーソーセージを生み出した老女が語りを基本として描かれますが
文体は語り手が色々と変わり、ちょっととっつきづらいかな。 それでも容は大変おもしろく、お涙頂戴でもありません。戦争の中、ありのままを受け入れて逞しく生きる女性の姿勢が胸を打ちます。オススメです。
物語は末期戦ドイツを舞台に1945年4月29日から始まる 2005-07-15
主人公の1人『脱走兵』となるのはオスロの本部海図室勤務だった海軍一等兵曹。ナルヴィクシールドと騎兵でも工兵でも歩兵でもない海軍なのに優秀乗馬者章(これが物語上、重要な小道具になる)授章者。第三帝国末期に良くある話で休暇途中に原隊に戻れず、3日間の対戦車即席訓練の後パンツァーファーストを持たされて前線に送られることに。彼を匿った女主人公はドイツ降伏の後も二人の生活を続けることを望み、銃殺を恐れ外出できない彼にウソの戦況を知らせる。「デーニッツ総統のドイツ軍は米英軍と停戦し、共に赤軍を東へ押し返している」この虚構の生活の結末は?カレーソーセージ秘話誕生とどうつながるのか!?
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